チョウ・キジェが最も素晴らしかったのは間違いなく今シーズンだ
2014年。勝ち点101。
2015年。J1で8位。
どう贔屓目に見ても資金的に豊かとは言えないクラブを躍進に導いた名将を語るとき、これらのシーズンのことが語られることになるのでしょう。
しかし僕はJ2を圧倒するわけでもなく、自分たちの良さを出し続けたわけでも無い今シーズン。
チョウ・キジェが最も素晴らしかったのは間違いなく今シーズンだと思っているのです。
チョウ・キジェとその教え子たち
2012年。多数の教え子たちとともにチョウ・キジェは監督としての第一歩を歩み始めることになります。
教え子というのは本当に文字通りの意味で、メンバーにはチョウ・キジェが育成時代に育てた選手たちが多く名を連ねていました。
確かに彼らは無名の選手たちでしたが、ダイナミズムに優れ、献身性があり、どこまでも走れる無尽蔵のスタミナを持っていました。
そしてなにより彼らはチョウ・キジェという監督をよく知っていたのです。
チョウ・キジェとその教え子たちは大方の評判を覆し、J1への道を駆け上がっていきます。
2013年のJ1では降格を味わうものの2014年のJ1では勝ち点101という圧倒的な強さで昇格。
この時にも中心選手だったのは、永木、遠藤、菊池。レンタル選手も含めればやはりチョウ監督がよく知ったメンバーが集まっていたのです。
ただ月日が経過するにつれ、これらの選手は一人また一人とチームを去って行きました。
まさに0からのスタートだった今シーズン
迎えた2017シーズン。チョウ・キジェ直径の教え子は高山薫ただ一人となっていました。2014年の主力は秋元陽太と菊地俊介の二人のみ。
テクニカルな選手が増えた反面、チョウ・キジェの戦術とは異質の選手が増えてきている。果たして今までのようなサッカーが合うだろうか?
これが僕の正直な感想でした。
さらに悪いことに唯一の教え子である高山薫は早々に離脱。さらに菊地俊介までも戦線を離脱してしまいます。
ボランチの秋野央樹は確かにうまい。しかし湘南のサッカーにはあっていない。
山田直輝は素晴らしいポテンシャルをもっている。
しかし湘南のサッカーというフレームに当てはめた時に彼らは良い選手ではないのではないか?
事実湘南ベルマーレは今シーズン苦しみ続けました。
しかしそれでもチョウ・キジェは時に自分の理想を貫きながら、しかしそれに拘ることなくチームを導いていったのです。
悪く言えばつまらないサッカーで何試合も勝利を拾いました。
しかしその中で広がっていったレパートリーの数々、我慢。
衝撃の山根視来コンバート。
山場ヴェルディ戦の若手同時起用。
アビスパ戦の4バック。0-3で負けても貫いた松本戦。
試合中に行われたシステムチェンジ。
失敗もありましたが、それでも今シーズンこそチョウ・キジェという監督の懐の広さ、深みを見た思いでした。
そして試行錯誤し、厳しい内容の試合が続く中で、チームは少しづつ湘南の色を出せるようになってきました。プレスのかけ方一つにしても、シーズン当初と終盤では全く違う。
時には理想を捨てながら、それでもチームは彼の目指す場所に少しづつ歩んでいったのです。
そしてやはり彼のもとでは選手の成長がはっきり見える。
秋野央樹を見て欲しい。本当にたくましい選手になったでしょう?
山田直輝もついに変わった。チームがあって自分がある。そのことを理解するようになりました。
今シーズンは2014年のような爽快感はないかもしれない。しかしやはり試行錯誤し続けた今年のチームも素晴らしかったと思います。
朝日新聞のチョウ・キジェ監督監督談話。
— SR (@sr2460) 2017年11月19日
理想と現実の狭間で監督自身も成長して行ったのがよく分かる素晴らしい内容。
チョウさんは今年また一つ監督としてのレベルを上げたと思う。#bellmare pic.twitter.com/Fz09dpR5zH
ああ。この監督はすごい。
理想と現実の狭間でもがきながら、それでも進んでいける人間がどれほどいるだろうか・・・。
2014年や2015年はたしかにすごかった。
しかし僕は2017年こそが監督チョウ・キジェが最も素晴らしかった年だと思っているのです。