湘南ベルマーレというクラブがとにかく否定をされた一年。
それはもちろん内部の不祥事もあったけど、メディア、外部の人間、環境。
とにかくすべての事象が湘南ベルマーレというクラブを否定していました。
「オマエタチハイラナイ」そう言われているような。
これは今年一年湘南ベルマーレというクラブで戦い続けた人間だからこそわかる感覚。
そうでなければ絶対に分からない感覚。
そして僕もその人間だったからわかることがある。
「今年落ちたらもう這い上がれない」
この状態で落ちたら本当にすべてを否定されてしまう。
それほどベルマーレというクラブは追い詰められていたと思います。
そして回ってしまった運命を決める一戦。そこで迎え撃ったのはJ2からの刺客。
かつての湘南戦士。
しかしそれは。間違いなく最強の敵でした。
湘南がもっとも追い詰められた日
少し早目に家を出て少し早目に待機列に並びました。
13時開始。いつもと少し違う開門時間。
いつもと何か違う雰囲気で7ゲートをくぐるとやはりいつもと違う光景がありました。
7ゲートも力を貸してくれ。すべてを決める一戦だから。
そんなメッセージでした。
席を確保して勝利への花道へ。誇張なしに史上最大のものだったと思う。
人が道路まであふれていたのは初めてでした。
20191214 J1昇格プレーオフ決定戦 湘南ベルマーレ対徳島ヴォルティス 史上最高の勝利への花道
声を出してサポートするという前向きな気持ちと本当にやらなきゃすべてが終わってしまうという不安。
正直この日はどんなに声を出しても不安が薄れることはなかったです。
ただこの日の花道。その後スタジアムに入ってから始まった最初のチャント。
本当に史上最大規模のものでした。これは大きな力になったと思います。
13:04。すべてを決める一戦が始まりました。
最初の10分は湘南のプレスがはまり徳島のビルドアップを許しません。ただ一本危険なカウンター。
でもこれならいける?
数分後。自分の考えはいかに甘かったかを知りました。
20分も経過すると湘南のハイプレスがかいくぐられるシーンが増え徳島の良さが出る時間帯が増えました。
「・・・徳島は強い。」
「どちらがJ1か分からない」
周りからそんな声が聞こえてきました。
徐々に押し込まれるベルマーレ。そしてとられたコーナーキック。失点シーンは完璧にデザインされたものでした。
今思い返しても本当によく研究されていたと思う。
はっきり覚えています。失点した瞬間血の気が引きました。1点取れば形成は逆転出来る。しかし失点後ピッチに落ちている現象を見ればその1点がいかに困難か。
明らかに硬い湘南とむしろこの舞台を楽しむかのように躍動する徳島。
「コレハ。コレハホントウニマズイ。」
とにかく2点目を取られたらもう無理だ。せめて・・・。せめて1点差でハーフタイムに。ボールは何度も危険水域に突入するものの最後の最後はなんとか体を張って守ります。
本当にこの時間帯に失点しなくてよかった。もし失点していたら今ここでこうしていることは出来なかった。
ハーフタイム。家族が長蛇の列に並んで買ってきてくれたローストビーフ丼。飲み物。一切手を付けていなかったことに気が付きました。
「とりあえず食べようか」
このクラブを見始めて20年近く経過しますが45分-15分-45分というレギュレーションの中で食べ物に逃げたのは初めてでした。
すっかり冷えてしまったローストビーフ丼は誇張でもなんでもなく今まで食べた中で一番おいしかった。
今思い返せば僕はそれほどまでにパニックに陥り、追い詰められていたのだと思います。
本当に個人的なことになりますがこのハーフタイムで僕は少し落ち着くことが出来ました。
後半開始。浮島監督はひとつの賭けに出ます。約3時間前の発表で彼が帰ってきていたのは知っていました。クリスラン。
本当にこの一枚が大きかった。
ブロックを敷いて守る相手にそれでも破壊できる個の力。
今考えてもこの手しかなかったと思います。
湘南は山﨑、クリスランという2枚で殴りに出ます。
後半が始まっても徳島の方がはるかにデザインされていてはるかにいいサッカーをしている。本当にどちらがJ1かわからない。
でももうそういうことを言える状況じゃない。今日だけは。本当に結果だけが必要だから。
直輝とコバショーの不在は痛かったけど、左サイドに冬一が置けたのは本当に助かった。あそこが徳島に対してずっとストロングな状態だったから。
その左サイドのクロスからクリスランのヘッド。
「梶川!」「カ ジ カ ワ」
湘南のかつての盟友。はるかに上手くなって。だけど今は湘南に立ちふさがる最強の敵。感傷になどひたれない。
そして64分。
「冬一!シンプル!」
その指示を無視して自分の信じる道を行く冬一。それを信じて走り出す山﨑。
クリスランがスルーしたボールに走りこんでいたのは去年あのルヴァン決勝で屈辱を味わったあの男でした。
あの瞬間。彼は「スルー」と言ったそうです。それこそが自分が決めるという決意の証。本当に彼は変わった。顔つきからも。
「天馬がいてくれてよかった。」
湘南の松田天馬はあの時とは比べ物にならない輝きを放っていました。
1-1同点。この時点ですでに一回泣いてしまったのですが、ピッチに目を移すと戦況は思ったより良くなっていないようでした。
徳島は相変わらず素晴らしいビルドアップをするし、バイスへのハイボールは本当に怖かったし。うまくカウンターで2点目なんて言ってられない。
本当にとんでもない圧力だった。
右サイドからのクロス。富居届かない。試合終了間際。ミドルシュートからネットが揺れる。富居は動けなかった。
上積みなんてなにもない。ギリギリのところで、それでも最後に信じられるベースの部分だけで戦っていました。
VAR二回。その他にもたくさんのピンチ。どれかひとつでもなにかが変わっていたら。でもまだ僕たちは生き残っている・・・。
本当に長い。長い。ロスタイム。
最初終わったのは分からなかったけれど。ピッチ上の選手たち表情で、僕たちは生き残ったことを知りました。
僕たちの長くて、本当に今まで見てきて一番長かった一年間は終わりを告げました。
試合を終えて
湘南ベルマーレ1-1徳島ヴォルティス
2020年。湘南ベルマーレ。・・・J1。
今まであんなに悲壮感をもって応援したことは無かったです。
声は出ているんだけどあの張りつめた雰囲気。当事者としてもう二度とあそこには出たくない。恐怖で震えながら応援してたと思います。
我々の残留に対してなにか言われているそうだが僕はそうは思わない。
そう言っている人間は「あの舞台に立ってみろ」と言いたい。
あそこで結果を出すことは理屈じゃない。それはもう、体感しないと分からないから。
全てが終わる可能性があった一戦は終わりました。これからの移籍のこと。ベルマーレというクラブのこと。組織としての拙さ。
何とかしていかなきゃいけないことがたくさんある。本当に考えさせられた一年でした。
僕の方もやらなくてはいけないと思っていることがありベルマーレに来られる頻度は減ると思います。だけど僕はずっとこのクラブだけを見てきたしこのクラブ以外を愛することはできません。
本当にベルマーレの未来がつながってくれて良かった。
とりあえず少し休もう。ずっと張りつめていたから。
最後に恒例のやつ
2019年J1昇格プレーオフ決定戦 湘南ベルマーレ対徳島ヴォルティスのMVPは?
本当に皆様!!一年間お疲れ様でした。この一年を戦い抜いた皆さんは本当に戦友だと思っています!
色々あった一年だったけどまた来年もヨロシクね!!!