俺は岡本拓也を尊敬している
岡本拓也が中にカットインしてボールを左に持ち替える。
利き足でないはずの左足から美しい軌道のクロスが放たれる。
イ・ジョンヒョプのヘッドを受けたアレン・ステバノビッチが豪快にシュートを宇宙開発した。
ため息が漏れるはずのこのシーン。僕には全く違う想いが心の中をよぎっていた。
守備はできるけど。それが岡本拓也への僕の評価
2016年。岡本拓也は浦和レッズから湘南ベルマーレに期限付き移籍で加入する。
背はそれほど高くない。でも空中戦はともかく対人戦の守備には強いものがある。
体も強そうだ。
攻撃に期待しちゃダメだな・・・。センスはなさそうだ。
岡本拓也に関しての僕の評価はそのようなものだった。
等々力での川崎戦で素晴らしいゴールを決めたもののこの評価はそれほど間違っていなかったと思う。
クロスは高確率であさっての方向に行くし、ドリブルすれば取られるし。
最強の縦突破を持つ藤田征也。異次元のスピードを持つ高山薫などと比べれば攻撃面で過度の期待をしてはいけないのは明らかだった。
それでも岡本拓也は上げ続けた。下手くそなクロスを。不得手な飛び出しを。
しかし2017年のJ2。攻撃面で期待してはいけないはずの岡本のゴールが増え始める。
相変わらずクロスはあさっての方向に行くしドリブルは下手くそ。ただ相手を駆け引きで出し抜いてフリーでゴールを決めるようになっていた。
ボールを持っていないところで向上が見られるな。相変わらずクロスは下手だけど。
その後も岡本は相変わらず全力でスペースに走り込み右足でクロスをふかしていた。
客席からのため息も一度や二度ではなかった。
プロなんだから常に自分を向上させなければならない。当たり前の姿勢。姿勢なんだけど・・・。
でもなんか岡本のそれって。
いつしか岡本がクロスを上げるたびにこう思うようになっていた。
「あいつ怖くないのかな。失敗とか怖くないのかな。」
だからそこまでの感情を持ったのは岡本が初めてだった。
「あいつ勇気あるよな。」
俺は岡本拓也を尊敬している
岡本拓也は当初「自分は下手で、相手をつぶすことが第一でそれ以外は二の次」のようなところがあったそうだ。
それをチョウ・キジェ監督ができるといい続けたようだ。
湘南とライザップを結びつけた「育成主義」。選手の潜在能力を引き出す指導哲学との融合|au Webポータルスポーツニュース
浦和レッズから期限付き移籍で加入して3年目の岡本は、もともと最終ラインの選手だった。1対1には自信を持つものの、ビルドアップの役割を託されるとストレスを感じる。それでもチョウ監督は「そこまでお前は下手じゃない、できるんだ」と言い聞かせ続け、昨夏からは右アウトサイドを任せるようになった。
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DF36 岡本拓也
「お前は自分のことをヘタだと思っている」
ただそれで果たして自分のできないこととこれほどまでに向き合うことができるのか。
僕はやはり岡本拓也は勇気がある人間なんだと思う。
苦手なことを苦手なままにしない。これのなんと尊いことか。
J2からステージをJ1に上げて岡本はJ2の時代より攻撃で躍動するようになっていた。レベルの上がったはずのJ1で。
通用しなかったはずのドリブルでJ1の選手が翻弄される。いつしかクロスは右だけでなく左も通用するようになっていた。
2018/6/2。後半ロスタイム。
劇的に増えたプレーの選択肢。岡本拓也は縦ではなく中にカットインをする。
そしてかつては使えなかった左足で・・・。
岡本拓也は向き合い続ける勇気と強さを持っている。
だから俺は岡本拓也を尊敬している。