2017年のJ2リーグの全日程が終了し、湘南ベルマーレはJ1に昇格することになりました。と同時に今年のベルマーレは苦しみました。
ただ現在のJ2はプレーオフラインから自動昇格ラインのクラブの層が厚く、このリーグを首位で勝ち抜いたことは素直に自信にしていいと思います。
ただ湘南ベルマーレというクラブの現在地はJ1という舞台で戦うには余りにも厳しい。
それは今一度確認しておこうと思い、この記事をアップすることにしました。
こういう話題は勝てない時、残留争いをしている時などに発信しても冷静に思考できる状態にある人は極めて少ないと考えているので、今この時期にあえて考えてみようと思います。
戦力的な話について
まずは来年の戦力的な話から。ここが話の本質ではないですが・・・。
選手の出入りが確定していないので分からないですが贔屓目に見ても残留争いをする可能性が高いです。
そもそも2014年に「J2を圧倒的な力で駆け抜けなければJ1では通用しない」という意識の元、圧倒的な力でJ2を制覇。翌年はJ1で8位という好成績を上げました。
そのくらいのチームでなければJ1では通用しないことを湘南ベルマーレというクラブ自体が証明しているのです。
そしてどう贔屓目に見ても現時点であの2014年ほどの力はありません。
2年後3年後に大きく選手が成長し、再びJ1で通用するチームを作り上げる可能性は大いにあると思いますが、今はその途中といったところでしょう。
ただJ1で通用するとまでは言えませんがJ1に残留する可能性は十分にあると思います。
残留する可能性は十分にある
昇格初年度に残留するクラブは
J2を優勝して昇格していること
ゴールキーパーにJ1レベルの選手を据えられること
が大切だと思っています。
特にJ2で一番になったクラブ。これはJ1クラブであろうとも決して侮ってはいけません。
この順位予想は毎年当たらないのであれですが、J2を制した札幌を6人中5人が降格すると予想しています。
まあ戦力的には僕もそうだと思うんですが、J2を優勝したクラブってやっぱり強いんですよね。近年J2を制したクラブがJ1一年目で降格したことはありません。
またゴールキーパーについて。そもそもの話としてJ1レベルのキーパー自体がそれほど数が多くありません。なのでJ2上がりのクラブはここが確保できずに落ちていきます。
そしてキーパーが揺れれば守りが揺れる。
よりハイレベルなJ1ではまず守備が決壊するのです。
ベルマーレも降格した年のうち2回はゴールキーパーが定まらず途中で補強しましたね。
今年残留した札幌はク・ソンユンという韓国代表クラスのキーパーが残留に大きな貢献をしました。
だから来年のキーマンは秋元陽太。この選手を残せるか残せないかが決定的な要素だと思います。
ベルマーレの資金力で他にJ1レベルのキーパー引き抜いてこいって言ったらそれは相当厳しいですよ。
強豪クラブならばJ1クラスを二人は確保しておきたい。だからどこも出したがらないもの。
逆に彼を残せれば十分残留の目はあると思います。
2年目の壁
ここからが僕の話したいこと。
湘南ベルマーレは1年残留した後、2年目以降が極めて厳しいクラブと言うことができます。
湘南ベルマーレにはいい選手がいます。そしてそのいい選手は低年俸でクラブにとどまっている状態です。
安くていい選手がいる。さらにJリーグは移籍金がほとんど発生しない。
だから引き抜かれる。
そして湘南ベルマーレはそれを引き止めるだけの年俸を支払うことができないのです。
鳥栖ができているじゃないか?
これは大きな過ちです。
Jリーグチーム情報 サガン鳥栖 財務データ | FootballGEIST
サガン鳥栖はJ1に昇格した年に約3億。その次の年にも約3億の赤字を出しています。
ちなみにサガン鳥栖の2014年の支出は約22億。果たして収入は・・・?
これを湘南に置き換えればいかに無茶な金額ということが分かっていただけると思います。(湘南の総収入は調べてみてください。すぐに出てきます)
これでもJ1の平均にすら遠く及ばないのです。
結局鳥栖は収入が支出に追いつかないまま財政破綻ギリギリのところでJ1への綱渡りを続けることになります。
湘南ベルマーレには地縁がない
ただ鳥栖はサイゲームスという大きな会社がバックにつくことでこの苦境を乗り越えました。
サイゲームスの社長は佐賀県出身。鳥栖には地縁という強力な隠し球があったのです。
2014年から2015年の間に赤字経営は一転。
広告収入が約4億。収入全体で約6億伸びるという常識では考えられない伸び率でサガン鳥栖は強くなったのです。
また、今年財政危機を乗り越えた長崎も高田社長にクラブの危機を救われています。
そしてこの高田社長が長崎に地縁のある人物というのは皆様よく知っている事実でしょう。
逆に現在のJリーグで地縁以外でこれほどの企業がつき、投資を行った例はありません。山形、岐阜が多少そういったところがあるかもしれませんが。
Jリーグがもっと投資対象として見られようになれば事態は変わるでしょうし、それは色々なクラブにとって良いことだと思います。しかし少なくとも今の市場環境では厳しいでしょう。
現在、地縁もなしに大規模な投資を行っているのはいわきFCだけだと思います。
ですから僕はいわきFCの動きには大いに注目しています。
みなさんは大嫌いでしょうが、僕は注目に値する、意義ある挑戦だと思っています。
話を元に戻しますが、湘南は地縁で大胆な投資をしてくれる会社が出てくる可能性は極めて低いクラブです。
1県1クラブですらなく、大都市のクラブでもない。むしろ大都市に囲まれていてそちらに目が向いてしまう。
どう贔屓目に見てもいわゆる故郷というような地縁を感じられるような場所ではない。
三栄建築さんが付いたこと自体がすごい。
三栄さんは地縁では無く純然たるクラブの魅力をもって、マリノス方面からのバッシングをも予想できた上で、それでも湘南についたのですから。
本当にここから先が厳しいと思う
しかしここからさらに先に行くにはやはりこれだけでは厳しいです。
例えばJ1でも波を起こした2015年。
湘南ベルマーレのスタジアム収容率は80.8%となっています。
これを超えたのは専用スタジアムの松本山雅(82.5%)だけ。
それに近い数字を上げた川崎フロンターレ(78.3%)ガンバ大阪(76.2%)はスタジアムを増設、新築しました。
Jリーグ観客動員データ 年別 2015 | FootballGEIST
もちろんJ2ではその収容率は減少します。ただJ1を見据えた時に、今の状態で強くなることに限界を迎えているのです。
川崎を除く収容率上位に専用スタジアムが並ぶ中本当によく頑張っていると思います。
ゴール裏当日券2900円。その他自由席3100円。
よくこの設定でこれだけの人を入れていると思います。言い方は失礼ですがあの本当に見にくいゴール裏で、本当に。
また2015年は永木、遠藤、古林、秋元を売った年。我々はこの年に浴槽施設を作るために募金をしなければならなかったんですよ。
しかも1,150万円目標金額に届かずに。
募金は彼らが移籍する前に行ったので時系列が逆になってしまうのですが、移籍金でああいうものが建設できたらなんて夢があるんだろうと何度も思いました。
だけどJリーグは移籍金でクラブを発展させるのが大変難しいリーグ。
本来、人を育てる湘南ベルマーレの生命線はそこにあるはずですが・・・。
さらに上に行くために
三栄建築設計様の資金力にも限界があります。
それは他の会社もしかり。サポーターのお財布の中身もしかり。
移籍金も厳しい。
以前そういうことを発言すること自体が今支援しているすべての人に失礼だと言われたことがありますが、それは間違っていると思います。
事実は事実。それを見据えた上でそれでもクラブを良くしていかなければならない。
また「ベルマーレが発展するためには勝って、勝って、勝ちまくるしかないんです」
と言われたことがあります。
大変危険で甘い考え方だと思います。
クラブの身の丈を越えて支出を増やしてもいいですよ。
ただもちろん失敗すればクラブは消滅します。もしかしたら成功するかもしれませんけれども・・・。
またやりがいで選手を引き止めるにも限界がある。責任感で選手をとどめることも同じ。彼らはサッカー選手という仕事についているのです。一般論としてまず適正な年俸が払われるべきなのです。
少ない資金で勝利を目指し続けることは大変美しい。
しかしそれは美しさと同時に大変不健全で危険な状態であると言えるのです。
スタジアム問題がどうなるかは分からない。だけどこれこそがベルマーレの未来だと思う
以前、ベルマーレがもっと上に行くためにはどうしてもスタジアムの問題を解決しなければいけないと書きました。
これは僕が言い出したわけでは勿論なく、元々クラブの共通認識として存在したものですが。ただどのクラブもいまより先に行くためにスタジアムをどうにかしようとしていますよね。
あのサッカー大国ドイツですら、現在の繁栄は新しくできたスタジアムの影響が大きいですから、どこもその結論になるでしょう。
そして自治体に頼れない湘南は現在民活でスタジアムを建築しようとしています。
吹田スタジアムのやり方に近いはず。いわきFCとはちょっと違いそうですかね?
クラカン前に知っておきたいスタジアム問題の現状と今後 | みんなでつくるスタジアム
2015年のスタジアム評議会のHPを読むと色々動いているのがよくわかります。
今一度読んでいい内容だと思います。
そしてやっぱりここがベルマーレの未来なんでしょう。
「署名だけでスタジアムが建てられるわけがないでしょう。ベルマーレが発展するためには勝って、勝って、勝ちまくるしかないんです」
本当にそうか?時間がある今だからこそもう一度よく考えて欲しい。
もしスタジアム問題が動いたとき。もしかしたら僕たちの力がいらない状況になるかもしれません。でももし僕たちの力が必要な状況だったら・・・。
経営危機、クラブハウス問題。馬入が水没した時。クラブの危機や未来のために名もない人間たちが団結することが出来る。それがこのクラブの最も大きな強みだと思いますけれど。
ベルマーレというクラブの現在地はJ1という舞台で戦うには余りにも厳しい。
でもその現実は変えられるかもしれない。1個人で変えられるようなスケールの話じゃなかったとしても、それでも僕たちの力が必要になるかもしれないのです。